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東京高等裁判所 昭和63年(く)206号 決定 1989年1月06日

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、申立人作成名義の即時抗告申立書記載のとおりであるから、これを引用する。

所論は、要するに、原決定は、本件訴訟費用執行免除申立に対し、「右申立を理由がないものと認め」ると記載しただけでこれを棄却しており、原決定には理由を全く付さないか、法の要求する理由を付さない違法がある、というのである。

そこで、記録を調査して検討すると、原決定が本件訴訟費用執行免除申立を棄却するに当り、「右申立を理由がないものと認め」るとのみ記載していることは所論のとおりであるが、訴訟費用執行免除の申立に対する裁判は、被告人の就業状況、収入、資産、負担を命ぜられた訴訟費用の額等の諸事情を総合して審査し、被告人に当該訴訟費用を完納し得る能力があるかどうかについて判断し、これが許否(一部免除を含む)を決するものであり、その総合判断の過程の詳細を逐一記載する必要はないから、原決定が「右申立は理由がないものと認め」るとしたことにより原裁判所が右諸事情の総合判断の結果、被告人らに本件第一審及び控訴審が負担を命じた範囲の訴訟費用を納付する能力があると認めた趣旨であることは明らかであり、裁判の理由として欠けるところはなく、原決定に理由を付さない違法があるということはできない。論旨は理由がない。

よって、本件抗告は理由がないから、刑訴法四二六条一項後段により、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官岡田光了 裁判官坂井智 裁判官生島三則)

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